本文へジャンプ

会長就任挨拶 2012.4


会長就任にあたり

 このたび,山本恵司会長の後を受け,日本安全性薬理研究会の会長に就任させていただきました。よろしくお願い申し上げます。本研究会は、日本の安全性薬理研究者に技術・知識に関する情報交換の場を提供するために、また日本における安全性薬理研究を世界に発信し、世界との連携を強めていく目的で2009年に発足しました。山本前会長は、この研究会の立ち上げをはじめとして、過去3回の学術年会の開催、また昨年度は情報交換会・技術交流会の開催に中心的に取り組み、本研究会の活動基盤の確立、発展に大きく貢献されました。学術年会も年ごとに参加者が増加し、第3回は300名を上回り、この研究会の活動が広く認知され、会員の方々にも価値あるものとなってきたと思われます。山本前会長を始め、幹事全員の方々のご尽力に感謝するしだいです。私の役割は、このように順調に上昇し始めた安全性薬理研究会の活動を失速させることなく、更に飛躍させることであると感じております。
 安全性薬理試験は2000年のICH S7Aガイドライン公表以後、医薬品の臨床試験導入、また申請のために重要な役割を担ってきました。QT間隔延長のリスク評価のために非臨床ではICH S7B、臨床においてはICH E14ガイドラインが制定され、QT間隔延長が大きな課題であることは言を俟ちません。しかし最近では、わずかな血圧上昇による心血管イベントの上昇、更には心収縮性の変化に基づく心血管リスクの上昇などが臨床の結果から指摘されるようになり、非臨床における心循環機能評価において総合的評価が議論されるようになって来ました。中枢神経系の副作用に関しても、痙攣、自殺、依存など臨床において多くのリスクが問題とされるようになっています。
 一旦選ばれた医薬品候補が、その後の非臨床および臨床試験で副作用のために開発断念に追い込まれることは、時間およびコストの無駄のみならず、新治療法の提供という創薬の使命という観点からも大きな課題です。このようなリスクを低減させるために、安全性薬理試験をより早期に実施する、あるいは新たな評価系を導入するといった活動も活発に行われるようになって来ました。新たな評価系としては、ヒトES/iPS 細胞由来の心筋や神経細胞が容易に入手できるようになり、これらの細胞を用いた薬理研究や安全性研究が、今後更に盛んになってくると思われます。ヒトへの外挿性がどの程度正しいかは今後の研究結果を待たなくてはいけませんが、大きな可能性を秘めています。
 このように外部環境は刻々と変化しており、安全性薬理試験においても変革に対応した取り組みが重要な課題になってきます。安全性薬理研究会は最新の情報、技術の共有と交流の場を会員の皆様に提供し、安全性薬理研究の方向性や課題の解決に向けた議論を活発におこない、会員の皆様に大きく役立つことを目指してまいります。研究会の幹事の皆様、および会員の皆様、ご協力よろしくお願いいたします。

2012年4月吉日
エーザイ 澤田 光平