安全性薬理試験は、2000 年に ICH S7A ガイドラインが公表されてから、医薬品の開発あるいは販売承認申請に必要な試験項目と位置づけられ、安全性評価に重要な役割を担ってきました。そして、安全性薬理試験は大きな変革期を迎えています。すなわち、これまでの初めてヒトに投与する前に実施する定型的な試験に加え、抗がん剤、バイオ医薬品など、考え方としても、技術的にも従来とは異なる評価を必要とする安全性薬理試験が増えました。また、社会的には3R の精神に則った動物試験の実施が強く求められ、安全性薬理エンドポイントの毒性試験への組み込みも大きな課題となりつつあり、そのための技術基盤の研究が始まっています。さらに iPS 細胞など新ツールの安全性薬理評価への応用が期待されるようになる一方、臨床試験で特定患者層における安全性が注目されるようになり、それに対応した(例えば病態動物モデルを用いた)非臨床での安全性薬理学的評価のニーズも高まってくることが予想されます。
安全性薬理試験は、薬理学と毒性学を基礎におき、さらに臨床薬理学との関連を常に意識した非臨床試験であり、その研究分野をサポートするために、国際的には、Safety Pharmacology Society が2001 年に設立されております。2009 年の学術集会も450 名以上の産官学の担当者が一同に会して交流し、その評価のあり方や手法について情報を交換しています。しかし、日本においては、製薬企業各社の安全性薬理試験担当者は、独自の知識・経験を培ってはいるものの、これまで安全性薬理試験の担当者が一同に集う場も、技術や知識を交流する場もありませんでした。
以上のような背景の中、安全性薬理試験に関わる技術、評価法、臨床への外挿などに興味をもつ日本の研究者が一堂に会して、安全性薬理試験に関する情報を交換する研究会を発足させることは時宜を得ているとともに、極めて意義深いことと考えました。また、日本におけるこのような研究会は、国際 Safety Pharmacology Society との連携も視野に入れ、アジアにおける安全性薬理研究を科学面とレギュラトリーサイエンスの両面からリードするものであると考えました。
そこで、発起人一同は、日本安全性薬理研究会(Japanese Safety Pharmacology Society, JSPS)を発足させることに致しました。本研究会は「医薬品の安全性評価を薬理学から支える」ことをビジョンに掲げ、少なくとも年1回の学術集会を主催し、安全性薬理試験に関わる研究者が集う機会を提供します。
以上
2009年12月2日
発起人一同