会長就任にあたり

この度、JSPS会則第11条第2項に則り、第5代JSPS会長を拝命しました塩野義製薬株式会社の新井 透子と申します。就任にあたり一言ご挨拶申し上げます。

JSPSは2009年12月に発足して以来、「安全性薬理学の継承と革新を通じ,優れた医薬品の開発に貢献します」を普遍のミッションに掲げ、より良い医薬品を世の中に送り出すために必要な安全性薬理学の知識や技術の発展を目標に活動し続けております。設立時に、年に一度の安全性薬理試験に関わる研究者が集う学術集会を主催することをお約束し、先般2025年2月には16回目の年次集会を盛会のうちに終了することが出来ました。本年会も、多くの方にご認知いただいている学術集会にまで成長し、微力ながらも安全性薬理研究を科学面とレギュラトリーサイエンスの両面から支える役割を果たせているものと考えます。このほか、当研究会ではこれまで定期的に様々な情報・技術交流会 (iSmart*1, CiPA*2, JiCSA*3, J-ICET*4, JESICE*5)を主催し、会員の皆様に情報と技術と共に人材交流できる有益な場を提供して参りました。安全性薬理学自体、近未来消滅することのない領域と考える一方で、その領域規模は年々縮小傾向にあり、単一の企業や施設では、安全性薬理学の知識や技術の継承と革新が容易ではなくなりつつある現状です。このような背景からも、交流会の活動などを通して、次世代の安全性薬理研究を担う研究者を輩出する後押しをすることも我々の責務の1つと捉えております。

一方で、当研究会は今後、日本国内の安全性薬理の発展のためのハブ組織として、会員の皆様への一方的な情報発信のみではなく、会員どうしの繫がりがより強固なものとなるような仕組みを新たに考案していく必要があると考えております。これまでもJSPS webサイト内に「フォーラム」や「JSPSコミュニティー」を設け、会員の皆さまの情報共有や議論の活性化を促す施策を実行してまいりましたが、残念ながら活発利用されている状況にはなく、現在新たな施策を議論中でございます。

医薬品のモダリティが多様化し、新薬創製の難易度も増していく中、益々多用なアプローチが求められる「安全性薬理試験」ですが、これらを成し遂げるためには、産官学の協力体制の維持,学術レベルでの国際協働は欠かせません。これらを踏まえて、今後具体的プランを提案していきたいと思いますので、会員の皆様には積極的なご参画・ご協力を賜りますようお願い申し上げます。 

*1: Investigation of in silico/in vitro model for arrhythmogenic risk prediction
*2: Comprehensive in vitro proarrhythmia assay
*3: Japan iPS cardiac safety assessment
*4: Japan activity for improvement of cardiovascular evaluation by telemetry system
*5: Japan activity for encouragement, succession and improvement of CNS evaluation

2025年4月吉日
日本安全性薬理研究会 会長
塩野義製薬株式会社
創薬開発研究所
新井 透子